Lulu "The Atco Sessions 1969-72 (2 CDs)" [ATCO/Rhino 8122-79948-8]
イギリス出身のアイドル歌手だった Lulu がアメリカに渡り,1969年に Muscle Shoals で録音し,1970年にリリースされたアルバム "New Routes" が,ついに CD 化された。しかも,Atco での2枚目 LP "Melody Fair" や,シングルのみでリリースされた曲に未発表だった曲まで収録されているという,ありがたい CD 2枚組の Collector's Edition 。
曲目リストと試聴はコチラ ↓ 。
www.woolworthsdownloads.co.uk
Lulu が Atco と契約したのは,当時の夫だった Maurice Gibb の The Bee Gees が Atco に所属していたためではなく American Studios で録音され,Atlantic からリリースされた Dusty Springfield の LP と同じようなアルバムを作りたかったかららしい。
◎ Dusty Springfield "Dusty in Memphis [Deluxe Edition]" [RHINO R2 75580]
Micky Most のポップなプロデュースを嫌い,Ray Charles にあこがれてアメリカにやってきた Lulu だが,デビュー・ヒットが The Isley Bros. の "Shout" だっただけあって,イギリスでもかなりディープな選曲のアルバムを残している。
● Lulu "Most Of Lulu / Lulu's Album" [EMI 7243 5 38850 2 1]
Micky Most と言えば,Jeff Beck に "Love Is Blue"(ポール・モーリアの「恋は水色」) をやらせたことで有名なプロデューサなので,嫌われて当然という気もするが・・・(^_^;)
Disc 1 の 1.〜 11. が,LP "New Routes" というタイトルのアルバムに収録されていた曲。Muscle Shoals Sound Studios で録音され,Personnel として,おなじみの 4人組(Jimmy Johnson,Barry Beckett,David Hood,Roger Hawkins) に加えて,Eddie Hinton,Cornell Dupree,Duane Allman というギタリストがクレジットされている。
Jerry Wexler,Tom Dowd,Arif Mardin という Atlantic の重鎮三人がかりのプロデュースで,曲によって追加されている豪華なストリングスや分厚いホーン・セクションは,クレジットは無いが,おそらく New York でダビングされたと思われる。
ホーンとラテン系のパーカッションが加わったファンキーな,5. Feelin' Alright で聴ける,おそらく Cornel Dupree のギターも New York でオーバーダブされたのでは・・・?
6. Dirty Old Man は,Duane Allman の "Anthology" に収録されており,Duane Allman がギターを弾いていることははっきりしているが,それ以外に Duane が参加しているのは,11. だけのようだ。1. や 9. などのスライド・ギターはおそらく Eddie Hinton で,Eddie はほかにもアコギなども担当しているはずで,ライナーには Eddie も含めた5人組が Muscle Shoals Rhythm Section の The main quintet として紹介されている。
その Eddie Hinton がソング・ライティングにも参加しているのは,3. と 10. の2曲。10. Where's Eddie は,Bonnie Bramlett の熟女バージョンが,↓ に収録されている。
● V.A. "Testifying - The Country Soul Revue" [CASUAL LOUPE009CD]
"New Routes" というアルバム全体を通して聴くと,三人がかりでプロデュースしているためか,散漫な印象を受けてしまう。良く言えば,バラエティーに富んでいるとも言えるわけだが・・・(^_^;)
2枚目のアルバムだった "Melody Fair" には,ホーン(5人編成の The Memphis Horns) やコーラス(The Sweet Inspirations など) のクレジットがあり,すべて Miami の Atlantic South-Criteria Studios で録音されたようだ。こちらも Atlantic の重鎮三人がかりのプロデュースで,"New Routes" に比べるとまとまりが感じられるが,シングルカットされた Bee Gees の "Melody Fair" の B 面が Doris Duke のカバー "To The Other Woman (I'm The Other Woman)" であることからも想像できるように,もう一つ的が絞りきれていないような印象は否めない。結局,このアルバムもたいしたセールスをあげることは出来ず,Lulu と Atco の契約が延長されることはなかった。
↓ の CD には,14. I Don't Care Anymore と 20. To The Other Woman のオリジナルが収録されている。
● Doris Duke "I'm A Loser: The Swamp Dogg Sessions and More" [KENT CDKEND 242]
"Melody Fair" で演奏をしている Rhythm Section は,The Dixie Flyers 。
'60 年代末に Sounds Of Memphis スタジオのハウス・バンドだった5人のミュージシャン(Jim Dickinson, Charlie Freeman, Mike Utley, Sammy Creason,Tommy McClure) を Jerry Wexler が引き抜いて Miami まで連れて来たわけだが,彼らが録音に参加しているアルバムとしては,↓ が紹介済み。
● Bettye Lavette "Take Another Little Piece Of My Heart" [Varese Sarabande 302 066 708 2]
● Esther Phillips "The Country Side of Esther Phillips/Set Me Free" [Collectables COL-CD-6841]
もちろん,Aretha Franklin のバックでも演奏していて,その "Spirit in the Dark" セッション時のアウトテイク "My Way" が ↓ にも収録されていた。
◎ Aretha Franklin "Rare & Unreleased Recordings from The Golden Reign of The Queen of Soul (2 CDs)" [Atlantic/Rhino 8122-79970-3]
ちなみに Aretha は,この次のアルバム "Young, Gifted and Black" で,Lulu の "Oh Me Oh My (I'm A Fool For You Baby)" をカバーしている。
The Dixie Flyers は,この後 Miami から Los Angeles へ向かい,最初のソロ・アルバムをリリースしたばかりの Rita Coolidge のツアーバンドとして雇われ,2作目のスタジオ録音にも参加することになる。
Disc 2 には,シングル盤のみでリリースされた曲や未発表だった曲が収録されている。大半が The Dixie Flyers による演奏で,こちらも聴き応え十分。
Lulu の公式サイト の Biography には,James Brown の次のようなコメントも掲載されているので JB のファンも一度聴いてみてはいかが・・・?
The first time I heard you sing, Lulu, I knew we were born in the same pond.
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2007年12月17日 21時35分
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