『ブラック・カルチャー観察日記 - 黒人と家族になってわかったこと』 高山マミ 著,P-Vine BOOKs 刊
第三者から見れば大したことのないように思えても,当事者にしてみれば切実な問題・・・というのは,巷にあふれているが・・・。
P-Vine BOOKs のサイトで,本書の目次や一部の内容が紹介されている。
http://p-vine-books.com/books/3653
この本を読んでいると,日頃,「音楽を楽しむのに肌の色など関係ない」 と公言している自分がいかに能天気であったかということを思い知らされる。
ただ,それでも,肌の色など気にせずに音楽を楽しみたい・・・というのは,方向性として,「理想」としては間違っていない・・・と思いたい。
本書の『オンチだっているさ』(pp. 134-141) の節に書かれている通り,黒人の中にも踊れない,歌えない連中がいるように,白人や我々日本人の中にも歌えて踊れるシンガーやダンサーはいっぱいいるのだから・・・。
「オンチな黒人も,歌の下手なシンガーをこき下ろす。自分のことは棚に上げて。」(p.144) ともある。
自分のことを棚に上げて他人をけなすのは,洋の東西を問わず,肌の色にも関係なく,全世界の人類共通の性(さが)らしい・・・(^_^;)
日アマゾンのカスタマーレビューで,「この本に書かれていることだけで黒人をステレオタイプすることなく、他の本も読んだほうがいい」とか「恵まれた人からの視点」などという書き込みがあるけれども,それらの批判に対しては,著者自身が「あとがき」(p.269) の中で見事に応えておられる。
> ものごとは「事実」がひとつのようで,実は違う。
> 「自分」が見たものと,他の人が見たものとで「事実」は異なる。
> そして,人の目で見たものじゃないところに,本当の「真実」が存在していたりする。
> これはあくまで,「わたし」の目から見たカルチャー論である。
> この本を手にとった方たちが,あまり語られていないブラック・カルチャーの一面を感じとり,少しでも興味を持ってくれることができれば幸いである。
> 「わたしの目」も,5年後,10年後にはきっと変わっているわけで,それはそれでまた楽しみだ。
本書の内容の中で,ぼくが個人的に感じた唯一の不満は,「sanger」の中に Sam Cooke の名前が見当たらない(p.143) ことでしょうか・・・。
(「sanger」 というのはスラングで,単なる「singer」以上の「歌い手に対する,最高の賛辞」なのだそうです。"singer と sanger" をキーワードにして検索していただくと,本書の元になったブログの記事を読むことができます。)
せめて Aaron Neville のように,singer にも sanger にもリストアップしていただきたかった・・・(T_T)
もちろん,そのように評価されているのは,著者の周囲のごく一部の黒人だけなのでしょうが・・・(^_^;)
白人の「sanger」のリストもあり,その中には Mick Jagger の名前が見え,さらには,その Mick と共に ↓ に参加していた Joss Stone も「sanger」として一部の黒人には認められているというのに・・・。
◎ SuperHeavy "SuperHeavy(+1)" [A&M UICA-1060] -2011
この本を読んでいて,時代と場所は異なるけれども,かつて同じような女性の写真家が1960年代に New York の Harlem で暮らした日々を綴った名著があったことを思い出した。
□ 『ハーレムの熱い日々 BLACK IS BEAUTIFUL』 吉田ルイ子 著,講談社文庫 刊
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2012年3月10日 21時12分
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