『ゴスペルの暗号 秘密組織「地下鉄道」と逃亡奴隷の謎』 益子務 著,祥伝社 刊
ミステリーのようなタイトルがついているが,かなりアカデミックな内容の本。
大阪南部の人にはおなじみの天牛堺書店にて定価の半額で入手。
日アマゾンで「なか見!検索」が利用でき,目次や内容の一部を読むことができるようになっているが,簡単に目次を紹介しておくと,
序 章 アメリカ黒人音楽と私
第1章 アメリカにおける黒人奴隷
第2章 「地下鉄道」という秘密組織
第3章 「車掌」と「乗客」の話
第4章 『地下鉄道』の終着駅
第5章 黒人霊歌と暗号
「地下鉄道」(Underground Railroad) とは,南北戦争以前に存在していた,南部の奴隷州から北部の自由州あるいはカナダへの「黒人奴隷の逃亡・亡命を手助けする秘密のネットワーク」。
「乗客」(Passengers) や「貨物」(Cargo) は「逃亡中の奴隷」であり,「車掌」(Conductors) が逃亡を手助けし,「駅」(Station) はその途中の「隠れ家」(Safe House) を意味している。
現代歌われている「ゴスペル」の原型となった「黒人霊歌」(Negro Spirituals) は,神をたたえ自由・救済を希求する抽象的な意味だけでなく,「地下鉄道の乗客や車掌たちが,追ってくる奴隷ハンターたちに気づかれないように,互いに発した指示,注意,合図などを示す暗号」という具体的な意味も持っていた。
例えば,'People Get Ready' の元ネタであろうと思われる 'Git'n Board'「天国行きの汽車」 という歌は,「『地下鉄道』の『車掌』が迎えに来るので逃げる準備をするように」という指示を表しているのだそうだ。(p.218-)
その「暗号」の内容が「第5章」に分類されて提示されており,それぞれ実際に歌われている歌詞と対訳が紹介されているので,非常に説得力がある。
著者は,1967年にアメリカのプロ合唱団「ロジェ・ワーグナー合唱団」の日本人初のメンバーとなり,その一員としてアメリカやヨーロッパの演奏旅行に参加したという人物。そのレパートリーには黒人霊歌が含まれていたことから興味を持つようになったそうだ。
あとがきの最後(p.238) に,「小著を読んだ方々が,歌詞が持つもうひとつの隠れた意味を知ることで,黒人霊歌やゴスペル,ジャズの聴き方,歌い方が深まり,興味がますます広がることを期待しています。」と書いておられるが,そのとおり,ゴスペルに対する「興味がますます広が」った・・・(^_^)v
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2010年12月4日 09時19分
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