ニックネーム:Mr.Pitiful
タイトルの "R 'n' S & B" は "ROCK 'n' SOUL & BLUES"。 "+ c" は, 最近聴き始めた Country Music 。
2010年12月04日(土)
『ゴスペルの暗号 秘密組織「地下鉄道」と逃亡奴隷の謎』
『ゴスペルの暗号 秘密組織「地下鉄道」と逃亡奴隷の謎』 益子務 著,祥伝社 刊

ミステリーのようなタイトルがついているが,かなりアカデミックな内容の本。
大阪南部の人にはおなじみの天牛堺書店にて定価の半額で入手。

日アマゾンで「なか見!検索」が利用でき,目次や内容の一部を読むことができるようになっているが,簡単に目次を紹介しておくと,
序 章 アメリカ黒人音楽と私
第1章 アメリカにおける黒人奴隷
第2章 「地下鉄道」という秘密組織
第3章 「車掌」と「乗客」の話
第4章 『地下鉄道』の終着駅
第5章 黒人霊歌と暗号

「地下鉄道」(Underground Railroad) とは,南北戦争以前に存在していた,南部の奴隷州から北部の自由州あるいはカナダへの「黒人奴隷の逃亡・亡命を手助けする秘密のネットワーク」。
「乗客」(Passengers) や「貨物」(Cargo) は「逃亡中の奴隷」であり,「車掌」(Conductors) が逃亡を手助けし,「駅」(Station) はその途中の「隠れ家」(Safe House) を意味している。

現代歌われている「ゴスペル」の原型となった「黒人霊歌」(Negro Spirituals) は,神をたたえ自由・救済を希求する抽象的な意味だけでなく,「地下鉄道の乗客や車掌たちが,追ってくる奴隷ハンターたちに気づかれないように,互いに発した指示,注意,合図などを示す暗号」という具体的な意味も持っていた。
例えば,'People Get Ready' の元ネタであろうと思われる 'Git'n Board'「天国行きの汽車」 という歌は,「『地下鉄道』の『車掌』が迎えに来るので逃げる準備をするように」という指示を表しているのだそうだ。(p.218-)
その「暗号」の内容が「第5章」に分類されて提示されており,それぞれ実際に歌われている歌詞と対訳が紹介されているので,非常に説得力がある。

著者は,1967年にアメリカのプロ合唱団「ロジェ・ワーグナー合唱団」の日本人初のメンバーとなり,その一員としてアメリカやヨーロッパの演奏旅行に参加したという人物。そのレパートリーには黒人霊歌が含まれていたことから興味を持つようになったそうだ。
あとがきの最後(p.238) に,「小著を読んだ方々が,歌詞が持つもうひとつの隠れた意味を知ることで,黒人霊歌やゴスペル,ジャズの聴き方,歌い方が深まり,興味がますます広がることを期待しています。」と書いておられるが,そのとおり,ゴスペルに対する「興味がますます広が」った・・・(^_^)v



本書に対する不満があるとすれば,それは,黒人霊歌やゴスペルに興味を持った人たちの参考になるような CD などの音源が紹介されていないことでしょうか・・・。

この本に紹介されている曲がすべて含まれているわけではないが,手ごろなアンソロジーとして,少々アカデミックに過ぎるきらいはあるが,個人的におススメできるのは,↓
● V.A. "Wade in the Water: African American Sacred Music Traditons (4 CDs)" [Smithonian Foikways SF 40076]

● V.A. "Good News: 100 Gospel Greats (4 CDs)" [Proper P1265〜8]
2010年12月4日 09時19分 | 記事へ | コメント(2) | トラックバック(0) |
| CHEAP TALK |
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こういうの好きです。フリーメイソンとか(笑)
この間テレビで、ケンタッキーの州歌などを作った『スティーブン・フォスター』のことをやってたんですが、白人の彼も同じように秘密組織である地下鉄道に関わっていて、暗号となるメッセージを歌の中に込めていたそうです。
何の花かは忘れたのですが、その花が国境となる河の周辺に咲き乱れる頃、とても美しいので見に来てほしい。その頃に河に来れば、その組織が北部へと逃亡の手助けをしてくれるというメッセージだったそうです。
白人である彼が何故そんなことをしたか、と言う理由に、彼の家系が黒人と同じように迫害にあっていたアイルランド移民だったからだそうです。
それから、『大きな古時計』の歌詞が、本当は100年ではなく、90年という数字だったこととかの内容も面白いものでした。
悪いことを暗示する数字として『ナンバー9』というのはよく使われていたそうですね。ビートルズの曲でもあるようですし・・・。

『ゴスペルの暗号』が読みたくなりました。
まさかオチが都市伝説とかではないですよね(^_^;)
ゴスペルが実際に「暗号」として機能していたかどうかについては諸説ありますが,逃亡しようとした黒人奴隷が存在し,彼らを捜索する Slave Hunter もいれば,彼らを手助けするグループや個人がいたことも歴史的な事実です。
逃亡奴隷を支援していたのは,北部で経済的に余裕のあった自由黒人や逃亡に成功した元奴隷が中心でしたが,その中には白人も,当然いました。

Sam Cooke は,フォスターの書いた 'Jeanie With The Light Brown Hair'「金髪のジェニー」 を歌っています。また,'Camptown Twist'("Twistin' The Night Away" 収録) は,フォスター作の 'Camptown Races' の改作です。
Sam は 'Grandfather's Clock' も歌っていますが,その曲を書いた H.C.Work という人も,「地下鉄道」の支援者だったそうですね。

「500マイル」という有名なフォーク・ソングも,もとは「900マイル」というタイトルだったらしい。
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