ニックネーム:Mr.Pitiful
タイトルの "R 'n' S & B" は "ROCK 'n' SOUL & BLUES"。 "+ c" は, 最近聴き始めた Country Music 。
2014年06月19日(木)
Bob Dylan "Slow Train Coming"
Bob Dylan "Slow Train Coming" [Sony SRCS 6338]

 Jerry Wexler の自伝本 『私はリズム&ブルースを創った』 を読んでいて,彼が一緒に仕事をした全アーティストの中で「天才」の称号がふさわしいと考えている3人の内,Ray Charles Aretha Franklin はすぐに見当が付くけれども,残る一人は Solomon Burke Wilson Pickett,あるいは Otis Redding か・・・,Sam Cooke と一緒に仕事をしていたら Sam なのだろうが・・・,などと考えながら読み進めていくと・・・
「ボブは私が一緒に仕事をしたなかで,レイ,アレサ,に続く3人目となる本物の天才だった。」(同書 p.318)

Jerry Wexler が Bob Dylan と知り合うようになったきっかけは,↓ のセッション(1972〜3)。
● Doug Sahm "The Genuine Texas Groover (2 CDs)" [Atlantic/Rhino RHM2 7845]
 ↑ は廃盤になってプレミアが付いていたが,最近リイシューされている。
「ニューオーリンズにとってのマック(・レベナック) 的存在が,テキサスにとってのダグ(・サーム) だ。ウェスタン・スウィングからライトニン・ホプキンスのヒューストン・ブルースまで,素朴なテックスメックスからポルカまで,ダグはあらゆるものを統合し,そこから産みだしたのが,独自のギター・サウンド,独自の歌声,独自の曲だった。そう,ダグはまさしく唯一無二だった。」(同書 p.293)

ほぼ同時期に Jerry Wexler が ↓ に関わったのは,Bob Dylan からの依頼によるもの。
● Barry Goldberg "Barry Goldberg" [Atco WPCR-14839]

その後5年ほどして,Jerry Wexler が Etta James のアルバム "Deep In The Night"[1978] を L.A. でレコーディングしているスタジオに突然 Bob Dylan が入ってきて,「新作をプロデュースしてもらいたい」と告げたのだそうだ。
「すぐさま,私の右腕で共同プロデューサー,バリー・ベケットに準備しておくように伝えた。」(同書 p.318)

翌1979年4月にレコーディングが始まったのは2代目の Muscle Shoals Sound Studios で,現在は Cypress Moon という名前になっているスタジオ。
Cypress Moon Productions Inc
https://goo.gl/maps/1Io0r


初代のあった 3614 Jackson Highway から車なら7〜8分ほどのところにある,かなり大きな建物。その正面に広がっているのは,墓場ではなくテネシー川の広大な流れ。
ただし,住所は初代同様,Muscle Shoals ではなく Sheffield, Alabama ・・・(^_^;)

共同プロデューサでもあった Barry Beckett 以外のバンドのメンバーは,
Drums: Pick Withers, Bass: Tim Drummond, Guitars: Mark Knopfler, Bob Dylan, Percussion: Micky Buckins
というリズム・セクションに,Harrison Calloway がアレンジした Muscle Shoals Horns と女性コーラスが加わっているだけ。
つまり,かつて Muscle Shoals Rhythm Section(The Swampers) と呼ばれたメンバーの中で参加しているのは,Barry Beckett だけ。

ドラムとギターは,このセッションの5ヶ月ほど前にやはり Jerry Wexler と Barry Beckett が共同プロデュースした Dire Straits のメンバー。そのアルバム "Communiqué" は,当時ヒット[Billboard 200: 11] していた。
Mark Knopfler のギターは Bob Dylan 自身もかなり評価していて,後に彼のプロデュースでアルバム "Infidels"[1983] を録音している。
Tim Drummond は,Neil Young のツアー・バンド Stray Gaytors のメンバーで,C, S & N のアルバムやツアーにも参加していたが,James Brown のバックで演奏したこともあるベーシスト。

ロシアからのユダヤ系移民の家庭に育った Bob Dylan が Born again (Christianity) に改宗した時期の作品として,その内容から物議をかもしたアルバムだが,それなりにヒット[Billboard 200: 3] もしている。
シングルカットされた 'Gotta Serve Sombody' もヒット[Hot 100: 24] して,カバーも多い。
Bob Dylan - Gotta Serve Somebody (Live) @Youtube
http://youtu.be/icUVZHRi3ps


このアルバムのリリース後に始まったツアーで歌われたのはキリスト教色の強い新作のみで,旧作は一切歌われなかった。
その「ゴスペル・ツアー」で歌われた新しい曲は,ツアーの途中で再び Muscle Shoals Sound Studios に立ち寄って録音されている。

◎ "Saved" [Sony SRCS 6170] -1980
 バックのメンバーは一部入れ替えられたが,Jerry Wexler と Barry Beckett が共同でプロデュースしたのは,前作と同じ。
その収録曲の内 'Pressing On' が,映画 "Muscle Shoals" の中で Alicia Keys によってカバーされた。
Pressing On [Toronto, April 1980] @Youtube
http://youtu.be/9igU6XZ4Fdg


Alicia Keys - Pressing On @Youtube
http://youtu.be/Hq8o8tZA0Kk


映画のサウンドトラック盤にも収録されている。
● V.A. "Muscle Shoals Original Motion Picture Soundtrack" [Republic B0019278-02]





その映画は,『黄金のメロディ マッスル・ショールズ』 という邦題で日本でも公開が決定したようだが・・・
公式サイト ↓
http://muscleshoals-movie.com/index.html

「黄金のメロディ」 というタイトルに違和感があるのは,ぼくだけか・・・?
Muscle Shoals, Alabama というアメリカの片田舎の小さな町の近辺のスタジオで録音された音楽を形容するのに,ふさわしい表現であるとはとても思えない。

ディープなソウルにしてもスワンプ・ロックにしても,そこで録音されたサウンドからは,鉄やコンクリートに囲まれた都会にはない,木や土や水の「自然」の音が感じられるのであって,「黄金」というきらきらした光り物のイメージとは程遠いように思うが・・・。
2014年6月19日 20時05分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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