ニックネーム:Mr.Pitiful
タイトルの "R 'n' S & B" は "ROCK 'n' SOUL & BLUES"。 "+ c" は, 最近聴き始めた Country Music 。
2010年05月23日(日)
『憂鬱と官能を教えた学校』
菊地 成孔・大谷 能生 『憂鬱と官能を教えた学校 【バークリー・メソッド】によって俯瞰される20世紀商業音楽史・上 調律,調性および旋律・和声/下 旋律・和声および律動』(文春文庫)

■ 菊地 成孔・大谷 能生 『東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編/キーワード編』(文春文庫)
↑ で,講義中に「教科書」としてあげられていた単行本が文庫化(2分冊) された。二人の著者による「文庫版あとがき対談」が加えられている。
単行本は,『東大アイラー』読後,図書館で借りて読みかけたが重いため途中で挫折し,文庫本になるのを心待ちにしていた。
『東大アイラー』が教養学部のゼミとして音楽の専門家ではない一般学生を対象にして行われた講義の内容をまとめたものであるのに対して,この『憂鬱と官能を教えた学校』は,アテネ・フランセが始めた「映画美学校/音楽美学講座」の内容を本にまとめたものなので,かなり専門的な内容も含まれている。受講者の中にはプロのミュージシャンを目指している人もいるようだ。ただ,かなり丁寧に時折ユーモアも交えて分かりやすく説明してくれているので,ぼく程度の知識(ギターはマイナーとセブンスのコードくらいならいろいろなポジションで押さえることが出来るが,ピアノは幼少時の「子供のバイエル」程度) でも何とか付いていけている・・・と思う。
「学術書」としては,小学六年生あるいは幼稚園くらいのレベル(上・p.368) なのだそうだ・・・(^_^;)

「この講義の目的」は,「バークリー・メソッドという,平均律の子孫であり,二一世紀に入りそろそろ役目を終えようとしているかに見える音韻教育体系の教科書を紐解きながら,二〇世紀の商業音楽の,ひいてはその母体となった一九世紀以前からのあらゆる音楽の影響関係を,通史的に再考察,再獲得することで,二一世紀の音楽のあり方を共に模索してい」くこと(p.13)。

「この講義の最重要テーマ」として提示されているのが,「音韻と音響」という概念(p.20)。本書では,話し言葉にたとえて,「音韻」は話している内容,「音響」は声質や話している調子など,「サウンドとしての響きの状態」と,定義されている。
「もちろん音韻だけの音楽というものも,音響だけの音楽というものもあり得」ず,「音韻と音響は切り離すことができない。ということはつまり,完全に分離して等価に扱うことも僕らには難しい。概念上,僕らの内部で音響と音韻は半端に溶け合い,半端に分離されている」。(p.58) ただ,「今は音響の時代」で,「われわれは近過去において,音韻偏重の商業音楽・大衆消費・大量流通音楽の中を生きてきて,そしてやっと二〇世紀が終わることで自然に」「音韻だけじゃなく音響にも十分に注意しながら音楽を消費するようになってきている。」(p.59)
差し詰め,メディアや再生装置によるサウンドの差異をたいして重要視せず,経済的時間的に可能な範囲でいろいろな音楽を聞いてみたいと思っている,ぼくのような人間は,時代遅れの「音韻」派ということになりそうだ・・・(^_^;)


音楽を楽しむのに理論など関係ないし,本を読むのが面倒くさい・・・と,考えている人のために,テレビ番組にもなっているが,オプション料金が・・・(^_^;)
菊地成孔と大谷能生の『憂鬱と官能を教えた学校』TV


著者の一人である菊地成孔は,作家菊地秀行の実弟。文庫化された『スペインの宇宙食』(小学館文庫) も読んだが,やっぱり「マトモ」な人間ではない。←もちろん,ホメ言葉のつもり・・・(^_^;)
彼が「マトモ」でないところは,浅川マキの追悼文にも表れている・・・?
菊地成孔『浅川マキ逝去』
2010年5月23日 10時20分 | 記事へ | コメント(0) | トラックバック(0) |
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