Cry To Me
Cry To Me (Bert Russell)
<2007/08/04 にアップした記事に加筆修正>
オリジナルはもちろん Solomon Burke 。1961年12月の New York 録音で,翌年 R&B で7位,Pop でも44位を記録している。アレンジャーは Klaus Ogermann という人物で,プロデューサは Bert Berns 。
● Solomon Burke "Rock 'N Soul (+8)" [Sequel RSA CD 861]
Solomon Burke ~ Cry To Me @Youtube
http://youtu.be/mEu8DrO9PbY
後にストーンズがカバーするわけだが,全く異なったアレンジ,歌い方なので,何を元ネタにしているのか気になっていた。
ストーンズのバージョンは,1965年5月に Sam Cooke でおなじみの RCA Studios, Hollywood で録音され,UK でも US でも "Out Of Our Heads" というタイトルのアルバムに収録されている。ピアノには Ian Stewart,オルガンには Jack Nitzsche が参加。
● Rolling Stones "Out Of Our Heads" [London/Polydor P25L 25035]
"Cry to me", The Rolling Stones @Youtube
http://youtu.be/0qsrUZelaq4
リバーブの効いたギター(ブライアン) とそれにからむキースのギターが中心のアレンジで,ポップ・ソウル的な曲調になっている。
スロー・バージョンとしては,後で詳述する Betty Harris のものもあるのだけれども,コーラスの一部を除けば,イントロや全体的な曲調はかなり異なっている。
ストーンズは,いったい何を参考にしてこういうアレンジを施したのだろうと思っていたところ,最初は確か日本編集盤の LP だったと思うが,Solomon Burke の 'Baby, Come On Home' を聴いて,あぁこのアレンジを借用して 'Cry To Me' に流用したのか・・・と,一時納得していた。細かいフレーズまで一致しているわけではないが,イントロのギターとか歌い出しの部分がストーンズの 'Cry To Me' と非常に似通っているという私見には賛同していただけるはず。
ところが,CD やインターネットの時代になって詳細なレコーディング・データを手軽に知ることができるようになり,改めて調べてみると,Solomon Burke の 'Baby, Come On Home' は1965年11月の録音(アレンジャーは Leroy Glover) で,ストーンズの 'Cry To Me' より後。・・・ということは,ストーンズの 'Cry To Me' が Solomon Burke の 'Baby, Come On Home' に似ているのではなく,その逆・・・?
さらに検索すると,'Baby, Come On Home' は Hoagy Lands がオリジナルらしく,それも CD 化されていた。
● V.A. "Our Turn to Cry" [KENT/Atlantic CDKEND 195]
HOAGY LANDS - BABY COME ON HOME @Youtube
http://youtu.be/KmklV5tNFBk
やはり Bert Berns のプロデュースで,1964年の New York 録音。ギターを弾いているのは Eric Gale で,そのアルペジオが印象的なアレンジ。こういうギターはソウル・バラードによくあるパターンなので,どれが元ネタなのかを詮索するのは意味が無いと言われればそれまでなのだが・・・。
ストーンズの 'Cry To Me' を聴いた Bert Berns が「お前たちの元ネタはお見通しだよ」と,ストーンズのアレンジにより近づけた形で Solomon Burke に 'Baby, Come On Home' を歌わせたかも・・・? などと妄想を巡らせるのも,また一つの楽しみ・・・(^_^;)
Solomon Burke の 'Baby, Come On Home' は,アルバムでは 'King Solomon' に収録されているが,↓ の2枚組編集盤が録音データなどの資料も充実しているので便利。
◎ "Home In Your Heart: The Best Of Solomon Burke (2 CDs)" [MMG AMCY-405]
'Cry To Me' は,Solomon Burke の代表曲としてライブでもよく歌われていた。
● "Soul Alive! (2CDs)" [ROUNDER 11661-2167-2]
◎ "Live At The House Of Blues" [Black Top BT-1108]
◎ "The Last Great Concert (2 CDs)" [Rockbeat Records ROC-CD-3092]
◎ Betty Harris "Soul Perfection Plus" [WESTSIDE WESA 807]
Cry To Me by Betty Harris @Youtube
http://youtu.be/_ibU3-RS6QY
最近,AIM から "Lost Soul Queen" という CD がリリースされているけれども,この Westside 盤 はそれより収録曲が多くライナーも詳しそうなのに,残念ながら廃盤になってしまっているようだ。
1960年代後半に Lee Dorsey とデュエットしたり,Meters をバックにした Allen Toussaint プロデュースの楽曲の印象が強いので New Orleans のイメージがあるが,Florida 生まれの Alabama 育ち。幼少時はゴスペルを歌っていたが,ソウル・シンガーを目指して California 経由で New York に向かい,Bert Berns に出会っている。オーディションで歌った "Cry To Me" のスローでゴスペル色の強いバージョンを聴いた Bert Berns は,すぐにレコーディングをし,Black では10位,Pop では23位と Solomon Burke のオリジナルよりもヒットしている。
1963年7月の録音で,アレンジャーは Garry Sherman という人物,女性コーラスは Sweet Inspirations 。
New York 録音ではあるが,ずるずると引きずるようなリズムに New Orleans の香りが漂っていると思っているのだが・・・。
Betty Harris は 'Mo Jo Hannah' も歌っているが,その曲は Tami Lynn がオリジナルで,N.O. R&B の定番曲だと思っていたのだけれども,Motown の Henry Lumpkin というシンガーが最初・・・?
Betty Harris の歌う 'Cry To Me' は,そのスローなテンポとコーラスの一部を除けば,ストーンズのバージョンとの共通点は少ないように思っていたのだが,この CD のライナーには,ヒットした後のツアーで録音されたライブ・バージョンがあり,その伴奏をしたバンドは Phil Spector によって指揮されていたと書かれている。
当時,Phil Spector がタクトをふるっていたとすると,アレンジは当然 Jack Nitzsche が担当していたと思われ,彼はストーンズのバージョンにオルガンで参加しているということで,そのライブ録音が気になっているのだが,残念ながら CD 化されていないようだ。
○ "Memories Of The Cow Place" [Autumn LP101]
↑ [Rhino/Vault LP105] として,1983年にリイシューされているらしい。
ストーンズ以外にも 'Cry To Me' をカバーしているシンガーは多い。
◎ Bobby Powell "Into My Own Thing: Jewel & Whit Recording 1966-1971" [Westside WESA 891] -2001
◎ Candi Staton "His Hands" [Astralwerks ASW 49832]
● Freddie Scott "Cry To Me - The Best Of Freddie Scott" [Columbia CK 65241]
◎ Garnet Mimms & The Enchanters "Cry Baby/Warm And Soulful" [BGO/EMI BGOCD268]
◎ Professor Longhair "Crawfish Fiesta" [ALLIGATOR/P-Vine PCD-23043]
◎ Professor Longhair "Mardi Gras in Baton Rouge" [Bearsville/Rhino R2 70736]
● Spencer Wiggins "Soul City U.S.A." [GOLDWAX/Vivid VGCD-003]
↑ にはモノラル,↓ にはステレオ・ミックスで収録されていた。
● "Feed The Flame: The FAME and XL Recordings" [KENT CDKEND 340]
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2015年4月28日 06時30分
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しかしベティ・ハリスの当時の写真は少なかったのか、なにかにつけジャケ写の「だっちゅ〜の」(←古い)ポーズをしょっちゅう見ますね!
イントロなしで歌い始めるのは自身のオリジナルバージョンの通りでしたが,ギターの音などはストーンズのアレンジに近いように感じました。
今のところストーンズより前にリリースされていることが確認できたのは下記の9点です。(他にご存知のものがありましたら是非お教えください)
Solomon Burke (Atlantic 2131) 1962
Betty Harris (Jubilee 5456) 1963
Garnet Mimms & The Enchanters - Cry Baby (UA 6305) 1963
Hoagy Lands - George Hudson presents Give 'em Soul (Capitol 1730) 1963
Harold Nicholas (Barclay ?) 1963, France as "Elle en pleure"
Iva Zanicchi (RiFi 16059) 1964, Italy as "Come ti vorrei"
Betty Curtis (CGD 9528) 1964, Italy as "Come ti vorrei"
The Interns (Philips 1345) 1964, UK
Barry St.John (Decca 11975) 1964, UK
これらのうち手許に音のある6点に関しては、ストーンズのアレンジに直接影響を与えたと思われるものはありません。聴いたことがないのは、Harold Nicholas(全盛期を過ぎてフランスで単身活動しているときのもの)、Betty Curtis(Iva Zanicchiと競作もしくは二番煎じ)、それとThe Interns(The ShadsowsのベーシストJohn Rostillが参加)の3点ですが、その可能性があるとしたら最後に挙げたものくらいでしょう。
ただ,ストーンズのバージョンは,だれかの 'Cry To Me' に影響を受けたわけではなく,ラテン系のダンサブルなオリジナル・バージョンからラテン色を消してオーソドックスなハチロクのソウル・バラードとして演奏してみた・・・のであって,そのアレンジのアイデアを提供したのは,当時 Phil Spector のアレンジャーとして活躍していた Jack Nitzsche ではないか? というのが,私見です。
'Cry To Me' のアレンジで,最も驚かされたのは,Candi Staton のバージョンでした。
◎ Candi Staton "His Hands" [Astralwerks ASW 49832] -2006
10. Cry To Me