こんな風に過ぎて行くのなら
浅川マキ 「こんな風に過ぎて行くのなら」 石風社
2003年7月に発行された,マキさんの初エッセイ集。
この本に収録されている「ネオン輝く日々」というエッセイが,"Sam Cooke at the Copa" について書かれた文章だった。
ちょっと長くなるけれど,最後の一節をそのまま引用させてもらうと,・・・
<前略>
サム・クックと云う歌手を語るのは困難なのではないのか,と思う。旅先の店の片隅で彼の唄うゴスペル,ブルースを聴いた。暗くて深い一拍は黒人の主張を伝えている。彼のもつブルー・ノートな声質と相俟ってこちらに,より辛く刺さってきた。
そんなサム・クックが,いきなりフロア・ショーで客席に語りかけ,ときには笑いながら「あんた,そう思う,だろ,『テネシー・ワルツ』,いい,うた,だって,だからさ,今夜は唄っちゃうよ,ほら,エーメン,エーメン,これだってスウィングしてるバンドに乗せて唄えば,そうそう,その調子さ,ハハハハ」。この明るさ,ポップなサム・クックに嬉しくなってどれだけ針を落としただろうか。だが,時間(とき)が経つ程に,明るさの向こう側に彼のディープなソウルが見えてくる。重くて暗い直接的な表現よりも,この一枚には彼が抱く背景がみえる。<後略>
あまりにも的確すぎて付け加えるべき言葉が無い。Rod や Otis Clay のカバーは愛聴していたけれど,Sam Cooke の名前が出てくるとは予想していなかったので,初めてこの章を読んだときは,本当に泣きそうになった。
浅川マキ は,ぼくが唯一,面と向かってサインをもらった歌手です。
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2005年2月23日 23時52分
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Past MUSIC in 2005 |
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