Z.Z. sings Sam.
この Z.Z. Hill というシンガーは,Sam Cooke と Bobby Bland を足して2で割ったような,あるいはもう一人 B.B. King を足して3で割ったような・・・と形容されることが多いわけだが,個人的にはやっぱり Sam Cooke の影響が最も大きいように思う。
ただし,直接 Sam Cooke をカバーしている曲は少なく,CD 化されて手元にあるのは,KENT 時代の "Nothing Can Change This Love" と,Malaco 時代の "Bring It On Home To Me" だけ。
Z.Z. Hill "The Down Home Soul Of Z. Z. Hill" [KENT CDKEN 099]
1. Baby I'm Sorry 2. I Need Someone (To Love Me) 3. Have Mercy Someone 4. The Kind Of Love I Want 5. Hey Little Girl 6. I Found Love 7. No More Doggin' 8. You Can't Hide A Heartache 9. That's It 10. Happiness Is All I Need 11. Everybody Has To Cry
12. Nothing Can Change This Love
13. Set Your Sights Higher 14. Steal Away 15. You're Gonna Need My Lovin' 16. You're Gonna Make Me Cry 17. Oh Darling 18. If I Could Do It All Over 19. You Don't Love Me 20. You Won't Hurt No More 21. What More 22. You Got What I Need
1964〜8年にかけて契約していた米 KENT からリリースされた作品集。バックは Maxwell Davis のバンド。
"Nothing Can 〜" の歌い方は,スタジオ録音よりもライブの方に近いが,もちろんこの時代はまだ "One Night Stand" はリリースされていない。Z.Z. は,Sam がこの曲をステージで歌っているのを見たことがあったのだろうか?
そのシングルの B 面だったという Jimmy Hughes "Steal Away" のカバーは,かなりブルージーなアレンジで歌われている。"You're Gonna Make Me Cry" は,O.V. Wright のカバー。
この時代の曲の中では,"Have Mercy Someone"(≒ Somebody Have Mercy),"That's It"(≒ That's Where It's At) などに Sam Cooke の影響がはっきりと聴き取れるし,その他の曲でも Sam のような節回しが聴けるが,"Everybody Has To Cry" が "Cry, Cry, Cry" によく似ているなど,Bobby Bland の影響がうかがえる部分もある。
おそらく,Sam Cooke のファンなら Sam のように聞こえ,Bobby Bland のファンなら Bobby のように聞こえる部分が多いということなのかもしれない。
結局,声質が Bobby Bland で,フレージングは Sam Cooke,そしてニック・ネームが B.B. King ・・・?
KENT 時代の残りの曲のほとんどは,Clay Hammond とのカップリングで,CD 化されている。
◎ -- & Clay Hammond "Southern Soul Brothers" [KENT CDKEND 188]
KENT を離れた後は,Swamp Dogg などのプロデュースによって Muscle Shoals で録音し,'70 年代の前半は United Artists など,後半は Columbia に所属して,いくつかの中ヒットを出しており,それらの曲もほぼ CD 化済み。
● "The Brand New Z.Z. Hill (+ Bonus Tracks)" [S.D.E.G. SDEG 1951]
◎ "The Complete Hill Records Collection / UA Recordings, 1972-1975 (2 CDs)" [Capitol 8 36296 2]
◎ "Let's Make a Deal/The Mark of Z.Z. Hill" [WESTSIDE WESA 876]
その後,1980年に契約したのが,Jackson, MS にある MALACO レーベル。
Z.Z. Hill "Best Of Z.Z.Hill On Malaco" [Malaco/Victor VDP-5161]
1. Please Don't Make Me(Do Something Bad To You) 2. Separate Ways 3. Bump And Grind
4. Bring It On Home To Me
5. Rolling Stone 6. Down Home Blues 7. Cheating In The Next Room 8. Right Arm For Your Love 9. Love Me 10. Open House At My House 11. Help Me.I'm In Need 12. Get A Little, Give A Little 13. Someone Else Is Steppin' In 14. Cheatin' Love 15. Please Don't Let Our Good Thing End 16. I Ain't Buying What You're Selling 17. Three Into Two Won't Go 18. Be Strong Enough To Hold On
この CD は日本独自編集で,1988年に日本語解説(桜井ユタカ) と歌詞付きでリリースされたもの。
"Bring It 〜" は,Malaco からの最初のアルバム "Z.Z. Hill"(1981) に収録されていた。年齢相応にこなれて熟練した味わいを感じとれるものの少々メリハリに欠け,物足りないところもある。
続く Malaco 2枚目の "Down Home"(1982) が2年余りもアルバム・チャートにとどまるという大ヒット,ロング・セラーとなり,ブルース・リバイバルのちょっとしたブームの先頭に立って活躍し始めたその矢先,1984年に交通事故が元の heart attack によって命を落としてしまう。
The Malaco Music Group は,Z.Z. が亡くなった後も,Bobby Bland や Johnnie Taylor,Little Milton,Latimore,Denise LaSalle,Shirley Brown,Dorothy Moore など,超の付くベテラン・シンガーたちによってブルース・リバイバルの中核として活動を続けてきたが,J.T. や L.M. も,もういない・・・。
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2008年3月14日 20時36分
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マラコから出た三枚のLPは全部持っていました。一枚目には思い出があります。当時よく通っていたのが吉祥寺にあった芽瑠璃堂というレコード屋さんでした。ある日たまたZ.Z.の新譜がかかっていて、それがクックの"Bring It Home To Me"のカバーだったのです。ぶっ飛んで、すぐ買って家へ直行しました。
二枚目の"Down Home Blues"がアメリカでヒットしてマラコレコードの黄金時代が到来しましたよね。当時僕はまだ20代の半ば。ゴールドワックス、スタックス、ハイを卒業する頃でした。
J.T.の"This Is Your Night",ミルトンの"Playing For Keeps"が出たときの胸の高鳴りは、未だに忘れられません。
ぼくは学生時代,武蔵小金井に下宿していて親戚が高井戸にいた関係で,'75年前後数年間,吉祥寺はおなじみの町でした。
当時,たしかジョージアというレコード屋さんもあったように記憶しております。