Yellow Moon
The Neville Brothers "Yellow Moon" [A&M 395 240-2]
1. My Blood 2. Yellow Moon 3. Fire and Brimstone
4. A Change Is Gonna Come
5. Sister Rosa
6. With God on Our Side
7. Wake Up 8. Voo Doo
9. The Ballad of Hollis Brown
10. Will the Circle Be Unbroken 11. Healing Chant 12. Wild Injuns
Brian Eno を師と仰ぐ Daniel Lanois がプロデュースした Neville Brothers の代表作 (1989)。Eno も録音に参加し,Keyboards や Sound Effects,Vocals というクレジットがある。
Neville Bros. が本来持っている民俗的なメッセージ性の強い音楽が Daniel Lanois の手によってポピュラー・ミュージックとしての完成度を高められ,ソウルやロックなどというジャンルを超えた,大衆音楽の歴史に残る傑作になっている。
Carter Family がオリジナルで,Staple Singers のバージョンも有名という,Country Gospel と Black Gospel に共通するレパートリーである "Will the Circle Be Unbroken" など,全ての曲が素晴らしいのだが,このアルバムのハイライトは個人的には,やっぱり "A Change Is Gonna Come"。ここでの Aaron Neville の歌声は,掛け値なしに美しい。来たるべき A Change に対する熱烈な願望と敬虔な祈りが込められている。
ゴスペル・フィーリングにあふれた歌ではあるが,内容は必ずしもゴスペル(福音)的ではない。
It's been too hard living, but I'm afraid to die. Because I don't know what's up there beyond the sky.
空のかなたに何があるのか分からない・・・つまり「天国」など無いということを知っている Sam Cooke は,
Then I go to my brother, and I say "Brother, help me please." ・・・と,神や教会ではなく同胞に救いを求めているのだから・・・。
続く "Sister Rosa" は,現実となった Change の一つについて歌われている。
公民権運動の中でもエポック・メイキングな事件であり,Martin Luther King, Jr. 牧師が表舞台に立つきっかけともなったバス・ボイコット運動は決して偶発的なものではなく,起こるべくして起こった必然的な運動であったことは,『ロックを生んだアメリカ南部』 の著者である James M.Vardaman の近著(↓)にもくわしい。(第三章 「運動」の始まり)
◇ 『黒人差別とアメリカ公民権運動―名もなき人々の戦いの記録』ジェームス M.バーダマン
当時,U2 の Bono に紹介されて,New Orleans で録音中の Daniel Lanois に会いに来ていた Bob Dylan は,このアルバム中で自分の歌を歌う Aaron Neville を激賞している。
「アーロン・ネヴィルがわたしの作品を二曲も――「ホリス・ブラウンのバラッド」と「神が味方」――歌っているのに驚いた。なんというめぐりあわせだろう。アーロンは世界でも有数のシンガーで,体つきは戦車のようにたくましいが,天使のような声,迷える魂を救うことができる声を持っている。体が声に似合っていない。外見についてはこれくらいにしよう。アーロン・ネヴィルの歌は,狂った世界に正気を呼びもどせそうなくらい,深く精神に語りかける。こんなふうに高いレベルのアーティストがわたしの作品を歌っているのを聞くといつも驚かされる。長いあいだ遠いところへ行ってしまっていても,こんなふうに歌われて歌がふたたび近いところへもどってくることがある。」
(『ボブ・ディラン自伝』菅野ヘッケル 訳,pp. 217-8)
↑ の本を読むきっかけも,『ロックを生んだアメリカ南部』で,そのエピローグ「都市という荒野で歌うディラン」中に,Bob Dylan が Robert Johnson に大きく影響を受けたという記述があったから。
John Hammond, Sr. から手渡された,発売前の "King of the Delta Blues Singers" のアセテート盤を Dylan が聴く場面は,感動的ですらある。(pp.348-357)
Bob Dylan と Robert Johnson の共通のファンはもちろん,どちらか一方のファンにも,ぜひ一読をお勧めしたい。
「あのときロバート・ジョンソンを聞かなかったとしたら,大量の詩のことばがわたしのなかに閉じこめられたままだった。わたしはきっと,それを文字に置きかえる自由と勇気を持てなかっただろう。」(p.357)
↑ 『ロックを生んだアメリカ南部』にも引用されている(p.283) 部分だが,Robert Johnson に影響を受けた Bob Dylan の歌う "Blowin' In The Wind" を聴いて,Sam Cooke は "A Change Is Gonna Come" を書いている。
favorite singers として Muddy Waters と John Lee Hooker の名前を挙げ,Howlin' Wolf の "Little Red Rooster" をカバーしている Sam Cooke だが,Robert Johnson は聴いていなかった・・・?
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2007年9月28日 21時40分
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